池田晶紀ポートレイトプロジェクトは、写真家・池田晶紀氏が“神田っ子”をモデルにポートレイトを撮影する企画として始まり、2012年から足かけ6年に渡り継続してきました。神田を中心とした東京の町で、地域住民や地元企業、同地の再開発を手がける建設会社をも巻き込み、アーティストたちが大小様々なアートプロジェクトを行う「TRANS ARTS TOKYO」(2012-2017)を契機にスタートしました。
“神田っ子”から始まったモデルは、今では神田のみならず千代田区全域にモデルの対象を広がり、現代の“江戸っ子”を写し出すポートレイトとして、2012年から毎年欠かさず撮影と発表が行われています。
撮影依頼のアプローチは、それまでの活動で知り合った方だけでなく、「初めまして」のご挨拶と共に撮影をお願いした時もありました。地元の町会長にご紹介いただき、撮影をお願いしに回った時もありました。撮影されたポートレイト一枚一枚には、そこに至る小さな物語が潜んでいるのです。
モデルになる人々は当然のことながら、写真撮影に不慣れな方ばかり。写真家・池田氏は、巧みな会話と撮影する場所の魅力と彼らの表情を読み取り、瞬時にポージングのリクエストを行い、声を掛けながらシャッターを切っていきます。モデルとなった人々は、最初ははにかんだ表情を見せますが、「自分の愛する場所」に立ち、撮影が進むにつれて誇らしい表情に変わっていきました。
本プロジェクトのもう一つの特徴は、撮影されたポートレイトの展示場所です。屋内で展示されるだけでなく、ビルの壁面や撮影場所となった店舗、町中の工事現場の仮囲いなどに展示されてきました。毎年「TRANS ARTS TOKYO」開催期間に、生活する人々の視界の中に突如現れ、日常の一部として発表されてきたのです。展示されるポートレイトは、紛れもなくこの町の中から生まれた「名場面」でもありました。
「TRANS ARTS TOKYO」は、2012年に神田を中心とした東京の街中で大小様々なアートプロジェクトを行うフェスとしてはじまり、6回にわたって開催されてきたアートプロジェクトです。このプロジェクトは再開発を手掛ける大手建設会社や地元企業が中心となり、地域の人々もまきこみながらアート集団コマンドNが企画制作し、牽引してきました。2018年からは2020年よりはじまる「東京ビエンナーレ」へと発展し、東京都心北東部“UP TOKYO”エリア[谷根千、本郷・水道 橋、上野、湯島・お茶の水、秋葉原、神保町、神田、北の丸公園・番町・麹町、大丸有、日本橋・京橋・銀座]に視野を広げ、それぞれのエリアとも連携を図りながらコミュニティに根ざしたアートプロジェクトの展開を行っています。